第3回神美知宏・谺雄二記念人権賞決定                                                      研究部門 金貴粉さん                    活動部門 ホームステイセンター柿の木に決定

2019年度神美知宏・谺雄二記念人権賞の選考結果について

 

 2019年度神美知宏・谺雄二記念人権賞選考委員会

 

研究成果授賞対象:金貴粉氏『在日朝鮮人とハンセン病』(クレイン、20193月刊)

 金貴粉氏の『在日朝鮮人とハンセン病』は、在日3世でもある若手研究者が、在日朝鮮人が歩んできた道を辿ろうとした著作である。第I部「ハンセン病対策と朝鮮人」では、戦前日本の癩対策と朝鮮人、戦後日本のハンセン病対策と朝鮮人、ハンセン氏病患者同盟結成と年金闘争、南北分断と朝鮮人入所者、の各テーマについて、在日朝鮮人患者に対する政策の通史が論じられている。第Ⅱ部「療養所という場所で」では、療養所に生きる、それぞれの個人史、望郷の思い、という3つの節で個人史に焦点があてられる。著者の研究手法は、法律、行政文書、療養所年報などの公的記録の分析によって通史的な総合的記述を行いながら、同時に患者・回復者が書き語った言葉を参照することで、公的な施策が個人の人生に与えた影響をオラルヒストリーとして描き出そうとする立体的なものとなっている。差別的処遇による日本人患者との分断、朝鮮半島の南北分断による思想対立など、在日朝鮮人患者が被ってきた差別が幾重もの重層構造をなしてきた実態は十分に知られておらず、本書は学術的価値の高い研究報告となっている。文章も平易で読みやすく、ハンセン病問題のみならず、在日朝鮮人の人権問題に関心を持つ人にも広く読まれるべき著作であり、人権賞に値するものと考えられる。

 

人権活動授賞対象:ホームステイセンター柿の木(代表・谷崎和男氏)

 ホームステイセンター柿の木(代表・谷崎和男氏)は、福岡県豊前市を拠点として、ハンセン病回復者が「地域生活を営む場を確保するための一助」(「設立趣意書」より)となる支援を目的に、2002年から「顔の見える関係を被害者との間につくる」(同)ための活動を行ってきた市民団体である。名称の「ホームセンター」とは、社会復帰を支援する地域の拠点を意味し、一般家庭をホストファミリーとして回復者を迎え入れるホームステイ、年末の餅つき大会の開催などに取り組んできた。療養所が存在せずハンセン病問題への関心が高まりにくい地域にあって、2012年までは毎月のように活動を行い、2013年以降も年末の餅つき大会を中心に毎年活動を行ってきた。活動の幅は、餅つき大会等での回復者と地域住民の交流促進、療養所訪問、ハンセン病問題に関連する講演会・映画・演劇等の企画など、非常に多岐にわたる。同団体が掲げた地域生活を営む場の確保のための取り組みは、必ずしもそのすべてが実現されたとは言えないが、回復者の高齢化が進む中で、社会復帰の実現は市民団体の取り組みだけでは困難な課題になりつつある。同会の活動は、そうした時代をむかえている今日にあって、ハンセン病問題に取り組む市民団体の一つの範となるものであり、人権賞に値するものと考えられる。