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「感染症法」改正に反対する市民学会声明を発出

政府、国会は「過料」修正案も撤回し、最重要の問題の審議に取組め

 

政府は、この1月22日、新型コロナウイルス感染症の感染拡大をうけ、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下、「感染症法」という。)等の改正案を閣議決定して、国会に提出した。同感染症法改正案では、患者等が入院措置に応じない場合・入院先から逃げた場合の懲役刑・罰金刑、及び積極的疫学調査での虚偽答弁や調査拒否等をした場合の罰金刑の新設が盛り込まれている。この改正案には、各界から強い反対が相次いで寄せられたということから、与野党の修正協議で、入院を拒否した患者らへの懲役は削除し、「罰金」は行政罰の「過料」に切り替え、過料の額は、感染症・特措法改正案ともに減額するとのことで合意したとされる。

この修正を高く評価する向きもあるかもしれないが、私たち、ハンセン病市民学会は、評価できない。「過料」修正案の撤回を求める。懲役、罰金を行政罰に変えても、本質的な疑問は解消されないからである。

任意入院が、ヘルシンキ宣言以来、培われてきた、医療に関する国際人権法の基本原則である。この原則がいかに大事であるかは、違憲判決が確定している国の誤ったハンセン病強制隔離政策の教訓からも明らかであろう。入院の受け皿となる病床が不足している中での入院強制は、合理性をまったく有しない。著しい人権侵害といえる。たとえ、刑事罰でないとしても、行政罰を入院強制の担保に用いることはなおさら許されない。憲法違反と言わざるを得ない。患者等にとって必要なことは、治療を受けられる病床の確保であって、罰則ではない。

罰則規定の導入は、立法事実すら何ら明らかになっていない状況で拙速に浮上したものであり、議論・検討はほとんどなされていない。根拠となっているのは、漠然とした不安感でしかない。有事の際、人々は、ともすれば、不安感に駆られて、極端な行動に走り、かつての、「無らい県運動」のような人権侵害行為に走りがちである。政府のなすべきことは、これに法的根拠を与えることではなく、人々に対し、冷静で、合理的な行動をとるように呼び掛けることである。今回の改正案は、その逆の措置といわなければならない。これでは、新型コロナウイルス対策を誤った方向に追いやる危険性が高い。不安感に駆られた「世論」を立法の論拠にすり替えるようなことは現にあってはならない。

問題は、それだけではない。入院「強制」を担保する手段が、修正の結果、「弱くなった」として、「自粛」警察等の力がまた全面に出てくるのではないかということも懸念される。ハンセン病の場合、入院(隔離)「強制」に罰則はなかったが、「無らい県運動」が罰則の代わりの役割を果たした。欧米に比べて、日本の場合、新型コロナウイルスに感染した人については、「身勝手な行動をした結果、勝手に感染した人」という見方が人一倍強く、「被害者」というよりは「社会に迷惑をかける加害者」という理解が強いといわれる。国際的な比較調査の結果でもそう報告されている。犯罪者に近い扱いをする、この偏見が変わらない以上は、たとえ、罰則がなくなっても、感染した人に対する社会的なバッシングに変化は生じないことになる。むしろ強まるのではないかと懸念される。こうした差別偏見の下では、感染した人に、適切な治療を受ける病床が用意されなくても、「やむを得ない」ということになる。

感染症法は、国に対し、入院した患者に対し必要な治療を行う義務を課している。にもかかわらず、国はこの義務を果たしていない、自宅療養とか、ホテル療養と称して放置している、この自宅療養の中で、治療を受けられずに亡くなる方が出ている、非難されるべきは国であって、感染した人・その家族ではない。感染した人を「加害者」扱いしない。差別しない。不当な取扱いをしない。むしろ患者として必要な治療を受ける権利があるとする。必要な社会的支援を行う。

この最重要の問題に取り組むことこそが、今、政府、国会には求められている。そのための必要な法改正でなければならない。

今回の新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部改正では、差別の防止に係る国及び地方公共団体の責務規定を設けるとのことである。しかし、その内容は、「国及び地方公共団体は、新型インフルエンザ等対策を実施するに当たっては、新型インフルエンザ等に起因する差別的取扱い等及び他人に対して差別的取扱い等をすることを要求し、依頼し、又は唆す行為が行われるおそれが高いことを考慮して、新型インフルエンザ等の患者及び医療従事者並びにこれらの者の家族その他のこれらの者と同一の集団に属する者の人権が 尊重され、及び何人も差別的取扱い等を受けることのないようにするため、新型インフルエンザ等患者等に対する差別的取扱い等の実態の把握、新型インフルエンザ等患者等に対する相談支援並びに新型インフルエンザ等に関する情報の収集、整理、分析及び提供並びに広報その他の啓発活動を行うものとする。」(第十三条第二項)という規定を新設するにとどまる。これで、差別偏見がなくなるかというと、そうではない。ハンセン病問題の教訓は生かされていない。

国の誤ったハンセン病強制隔離政策の下で、「人生被害」を被った元患者・家族の方々が、今回の法改正の動き、そして与野党修正の動きをどう受け止めておられるか。ショックは格別のものがあると推察される。我々の犠牲の上に導き出された教訓を、国は生かすどころか、足蹴にするのか。このような絶望感に追いやられているのではないか。

私たち、ハンセン病市民学会は、元患者・家族の思いを共有しつつ、国、国会が、罰則規定を撤回し、上述したような最重要の問題に真正面から真摯に取り組むことを強く要請する。

 

2021年2月1日

 

                         ハンセン病市民学会

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感染症法改正に反対するハンセン病市民学会声明「政府、国会は「過料」修正案も撤回し、最重要の問題の審議に取組め」
ハンセン病市民学会声明「政府、国会は「過料」修正案も撤回し、最重要の問題の審議に
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菊池事件国賠訴訟実質勝訴

去る226日、菊池事件国賠訴訟の判決が熊本地裁で言い渡され、特別法廷を断罪する、再審に向けて大きな力となる、実質勝訴判決を勝ち取りました。

 判決要旨と弁護団声明は下のボタンからご覧ください

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ハンセン病家族訴訟 勝訴

6月28日 熊本地裁は、国の隔離政策が、ハンセン病患者のみならず、その家族に対しても、差別や偏見、家族関係の崩壊など多大な被害を与えたものであったとして、国の責任を認めました。

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判決骨子
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その判決を受け、市民学会は、7月6日、声明を発表しました。

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ハンセン病市民学会は、20055月、「交流」「提言」「検証」を取り組みの三本柱として掲げ発足し、まだまだ道半ばとしか言えないハンセン病問題の全面解決に向けて、日々活動を続けております。

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「提言」

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「検証」

この課題は、とくにこれから力を入れていく取り組みです。会員誰でもが参加できる、課題ごとのプロジェクトチームをつくり、研究集会などを開催していく予定です。

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これからの市民学会は、より「市民」という言葉に軸足をおき、市民学会が、一人からでもハンセン病問題に取り組める、「場」になっていきたいと思います。「場」が開かれることで、人と人、課題と課題が結ばれ、一人一人の力が、ハンセン病問題の全面解決に向けた大きな力となることを願って、活動してまいりたいと思います。

ハンセン病問題の全面解決を願う、一人でも多くの方が、この場に集ってくださることを念願いたします。